

心残り
私が学生時代、一年ほど住んでいたのは、因縁深い地域でしてね。水汲、と書いて、みずくま、と読みまして。 では、何の水を汲むのか? これは引越した後、しばらくして聞いたことなんですがね。実は江戸時代から明治に至るまで、水汲地区は処刑場だったそうでして。処刑者の血を洗う水を汲んだ...


井戸
水道路のない昔、井戸は身近な異界への入り口でした。何しろ、井戸に落ちてしまうと死んでしまうこともありましたしね。 反面、人に必要不可欠な水も恵んでくれます。井戸に畏敬の念を抱くのは当然と言えば当然でしょうね。 近年、水道路の発達により、井戸は落ちて危ないもの、と考えられるよ...


探しモノ
陰惨な歴史、特に戦争時代の悲しい話ほど、伝わり難いのではないか、 とよく思います。決して忘れることのできない、心に刻み付けられた光景なんでしょうけれど、思い出すたびに心が疼く。戦争体験が伝わらない訳は、伝える側のそんな心の痛みがあるからかもしれません。...


妖怪化する人々
近所の商店街の外れに、とあるバーがありましてね。そこのママさん、気が強い、というか、性格的に激昂しやすいというか、とにかくコワイ人でしてね。よく言えば、類稀なる上昇志向の持ち主。ですので、非常に理想が高く且つ厳しい。女性スタッフは元より、バーに来るお客さんにまで厳しい人...


二人乗り・・・
川に架かる橋、って、門と同じく、異界への入り口だ、という話、聞いたことありません?丑の刻参りの原点は橋姫ですし、昔話の”大工と鬼六”で、橋を架けるのは鬼ですし。神道では、川も重要で、川に流した穢れはいずれ海の底に流れ着くといいます。そうすると、川は異界の始まりで、そこに...


Fトンネル
数々の怪談話で、東京近郊にあるこのFトンネル。幽霊出現目撃記録や、M事件にまつわる恐怖体験もありますが、僕が体験したのは、異次元体験でしたねぇ。ここはおかしい。 幼女誘拐殺人(M事件)で注目されたこのトンネルは、今から凡そ10年前、心霊スポットとして雑誌やテレビでちょろちょ...


キ、ツ、ネ・・・
僕は誰にでも霊感みたいなものがあると思ってましてね。ない人なんていないんじゃないかなぁ。これが霊感だ、とはっきり示せる人が居ないだけで、皆持っているんだと思うんですよ。なければ生きていけないわけだし、ねぇ。 霊感を言い換えちゃうと解りやすいかもしれませんね。霊感=インスピレ...


親父殿の話
僕の親父は頭が良くて、とある大企業の研究部長でした。化学屋でしてね、科学の信望者でしたね。凡そ再現性のないものは、この世に存在しない、という持論、信じていましたね。ですから、幽霊話なんて信じない、って、口癖のように言ってましたよ。...


泣き声は何処から?
鎌倉の古刹に、年一回、人形供養して下さるお寺さんがありましてね。人の形をしたものを供養する、ということがどんな意味があるのか、ここでわかった気がします。 その日、本堂の前は人、人、人で溢れかえっていました。普段は静かな境内なんですがね。人形供養の日は一変していました。...


狐憑き
これは後輩のT君の話でしてね。T君、彼は、おっとりしていて、どこか抜けてる感じの、争いを好まない性格に見えました。 結構な資産家に育ったためか、お坊ちゃん気質が抜けないんでしょうね。良く、同級生に茶化されていましてね。T君の顔を思い出すたびに、彼が茶化されて、困ったようなは...