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妖怪とは? お客さん編

  • ドラ
  • 2015年10月12日
  • 読了時間: 5分

 人が妖怪になる、ということがあると思います?僕はあると思うなぁ。百鬼夜行図絵なんか見ると、物が人化して、目鼻を持っている。目鼻があると言うことは、物が人のような感覚を持った現われですよね。人への擬人化が妖怪なんでしょう。

 物が人の感覚を持って妖怪になるのでしたら、元々五感を持つ人はどうなんでしょう?うん、人の方が妖怪化しやすいのかもしれませんよ?恨みつらみが凝り固まって妖怪になるんじゃないかな、と。

 あれ?それって、幽霊じゃないの?なんて声が聞こえそうですが、その恨みを凝り固めた本人は死んでいません。古典に、生きながらして鬼になる話はありますよね。僕の身近で、そんなお話の再来のような事件が起こりました。

 このお話、二つの怪談が微妙に交錯するんですが、順を追ってご紹介します。まずはお客さん編。

 事の発端は、長瀬さんというお客さん。以前にもお知らせしましたが、僕は整体を営んでいましてね。この方を施術していますと、どういうわけか頭の隅にちらちら映像が浮かびましてね。珍しいことですが、この時に限らず時々施術中におかしな映像が浮かぶんですよ。

 その映像というのがちょっと変わっていましてね。真っ暗な中に毒々しいほど赤い裸の何かが座っていましてね。何か、って、赤ん坊のような体つきでしてね。最初は目がなかったんですが、顔の真ん中に二筋刻まれていて、それが開くと、黄色い目になった。丸い目でしてね。黒目もある。その良く判らない不気味なものが、口を開くと、威嚇するように歯を噛み鳴らしているように見えました。歯が妙に大きくて、薄気味悪いんです。

 思わずお客さんから手を離してしまいました。ですが、仕事ですからね。気を取り直して、再び施術にかかります。なるべくその気味悪いものが浮かばないように、気のせいだ、と思い込むことにして続けるんです。ところが再びその映像が浮かぶんですね。今度は僕の方を見て、嘲るように笑っている。

 何だ?このイメージは?と、奇妙に思いました。僕の想像上でまとめたイメージにしては、随分漫画チックですし、幼稚にさえ思えます。お客さんを緩めながら、無視しよう、と決めて掛かると不思議、その妖怪チックな化け物イメージは消えていきました。

 施術が終えまして。長瀬さんとお茶を飲みつつ歓談していましてね。その長瀬さんがため息を吐きながら、呟きました。

「ああ、最近ツイてないのよねぇ。どういうわけだか、いつもは割りとすんなり行っていることが、最近に限ってちょくちょくつまずく」

 長瀬さんはある意味完全主義者ですので、仕事に掛けては手を抜くことはしないんです。細部もきちんと目を配り、仕事を着実に上げていく人です。その長瀬さんがポカミスの連続だと言うんですね。彼女にしてみればありえないミスだ、と言うわけです。

 そこでふと思い出したのは、先ほどのイメージ。施術に集中している中で、頭の中に割り込んできたあの妖怪のことです。

 僕の表情に表れていたんでしょうね。長瀬さんが僕の様子に気が点きましてね。

「あ?なんかわたしに憑いてるんだ。何か見えたのね?」

 長瀬さんは僕を霊能者の如く思っている節がありましてね。まあ、占いはするし、コリの状態から日常の姿勢に着いて言い当てることがありますので無理もないか。僕自身はそのようなものではないと思っています。まあ、この時ばかりはヘンなイメージが浮かんでいましたからね。一度は言っていいものか言い淀みましたが、素直にお話しました。

 当然長瀬さんは驚きましたね。

「何処でそんな妖怪みたいなもの、拾っちゃったんだろう?」

と、訝り始めること仕切り。

 いやいや、僕の勝手なイメージだから、その妖怪が長瀬さんに憑いているとか憑いていないとかのお話ではないですよ、と言ったのですがね。長瀬さんはすっかり取り憑かれているんだ、と思い込んでしまいました。

 「妖怪に憑かれてしまっているとしたら、御祓いするのには何処がいい?」

と、言い出す始末。

 悪乗りしたわけではないんですが、妖怪、それも鬼のようなイメージでしたからね。八幡さんは如何です?とオススメしました。大江山の鬼、酒顛童子の退治話に出てきますからね。ほら、四天王に神変鬼毒酒という鬼だけに効くお酒を与えたのは八幡さんですからね。

 すると、八幡さん、と聞いた長瀬さんは、

「ああ、そうか!そうなのね!」

と、深く納得するように頷きましてね。訳を尋ねますと、

「実は最近勤務地が変わったの。大概、勤務地が変わると、その地の鎮守さんにご挨拶に行くんだけど、未だ行っていないのよ。長く勤めるつもりがないんで、ご挨拶を延期してたの。実はその勤務地すぐ近くには、すごく大きな八幡様がいらっしゃるのよ」

長瀬さんが言うには、そこは子育て信仰が特に篤く、子育て八幡として親しまれているらしいんです。

 「そうだったのね。神様って、時々回りくどいことするわよねぇ。挨拶してくるかなぁ」

つまり、長瀬さんが言うには、こういう事です。

 八幡様は何度も挨拶しにおいで、と呼びかけてくれたのだけれど、長瀬さんは聞こうとしなかったんですね。そこで、わざわざ妖怪を長瀬さんに憑け、お参りに来るように即した、という解釈なんです。

 後日、長瀬さんは八幡さんにお参りに行ったそうです。その験あってか、ポカミスは無くなり、いつも通りに仕事が運ぶようになったそうです。

 ここまでですと、題名とは少し違う内容に見えますよね?ところが、人が妖怪化する、と言う話はこの話が序説になるんです。僕が長瀬さんの施術中に見た、あの鬼、どうやら疫病神のような存在だったため、今度は僕が困らされてしまう。次回はそのくだりをお話しさせていただきますね。

 
 
 

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