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手毬:伝染編(注意!障る怪談です!)

  • ドラ
  • 2015年9月12日
  • 読了時間: 9分

   続きの三話目になります。話を三つに分割したのも、前述の通り、このお話はどうもアップしにくい話でしてね。書き上げてアップロードしようとすると、PCクラッシュしたり、何故かサーバーダウンしたり、文章自体が消えてしまったり、と、何度も書き直す羽目になる。

 この編に書かれている内容が”障る”んだと思います。ですので、この条項がアップロードできれば、とりあえず無事に済んだことになるでしょう。

 再三申し上げますが、このシリーズ三話は障りがある怪談です。そのため、恐い経験をしたくない方は読まずに頂けると無難です。

 また、この話はある意味非常に整っていますので、創作だろう、と思われる方も多いかと思います。ですが、これは実話。確かめるヒントもここに残しておきますので、ご検証頂ければと思います。

 ヒントとは、例えば蛍祭りの会場場所名。そしてこれから明らかにする、僕が映像で見た子供さんのお名前。

 記憶を頼りに綴っているので、記憶違いがあるかもしれませんが、確かめようとすれば確かめられる程度に、ここにヒントとして実際の場所名や墓碑銘を記して置きます。

 それでは最終話。綴らせていただきます。

 僕に取り憑いていたと思われる少女の話をU君から聞いた日の晩、不思議な夢を見ました。

 真っ暗な中、赤い着物を着た女の子がただ一人、手毬遊びをしていましてね。声は聞こえないのですが、僕の聞いたことのない手毬歌を歌って遊んでいるのが判りました。

 すぐさま、ああ、これは夢の中なのだ、と判りました。そして、夢の中に現れた少女こそ、あの蛍祭り会場から僕が連れてきた女の子なのだ、と思いました。不思議と恐くなかった。ただ、少女の寂しい孤独を、夢の中の僕も共感していましたね。

 彼女は非常に寂しげに、歌を歌い、手毬をついて遊んでいる。僕はそれをただ眺めている、という夢でした。

 朝起きますと、不思議とその少女の夢を見たことは忘れていました。ところが、二晩目。また少女が歌を歌い、手毬をついている夢を見る。

 二日目となりますと、僕はただ少女を眺めているだけでは終わりませんでした。夢の中の僕が彼女に近づきますと、彼女は嬉しそうに笑いましてね。で、微笑を浮かべながら自分の遊んでいた手毬を差し出すんです。

 僕は鞠を手に取り、彼女の唄う聞いたこともない手毬歌に乗せて鞠をつく。

 一切音のない夢なのですが、手毬歌と彼女の喜ぶ笑い声が、その、僕たちだけいる何もない空間に響くのが判るのです。

 その後、総じて一週間ほど、彼女は僕の夢に続けて出てきましてね。手毬で一緒に遊ぶんです。

 時にはその少女が手毬をしている脇から、彼女の手毬を足で蹴る。すると、彼女はきゃっきゃと喜びながら、手毬を取りに走り回る。手毬を取って戻ってきたところで、また鞠を暗闇の奥の奥へと投げると、少女は喜んで鞠を取りに駆けていく。そんな夢を毎晩、見ました。

 一週間続けて同じような夢を見る。異常なことなのですが、当時の僕は何故か恐くなかった。連日ですので、流石に起きている時も昨晩見た夢を覚えています。

 そこで、その不思議な夢の話を、丸子町の蛍祭り会場からの経緯を含め、後輩のN君に話してみました。

 N君はこのような不思議な話が好きな男でしてね。今は僕より先に作家デビューして、コアなファンが多いみたいです。売れていますし。羨ましい話です。

  N君の関心は、僕が毎晩見てきた夢の中の少女よりも、彼女のことを解き明かしたU君にありましたね。

「さすがUさん!やっぱり凄い人なんですねぇ!」

U君もN君も、僕を通して知り合った間ですのでね、僕の話よりもU君の方が興味深かったようです。そういえば、現在作家をしているN君の代表作は、仙人の出てくるファンタジーですからね。彼の興味は当時、僕やU君の話よりも仙人修行をしているU君、に興味があったのでしょう。

 N君に夢の中の鞠をつく少女の話をしたその日より、何故か、就寝しても、その女の子が現れることがなくなりましてね。漠然と、あの少女の孤独が少し癒されて、丸子町にあのお墓に帰っていったんだろう、と思っていました。

 急転直下に事態が変わるのは、一本の電話でした。受話器を取るなり、N君が、開口一番にこう言いました。

「先輩ッ!あの女の子、何処から来たんですかッ!」

 正直、最初は何のことを言っているのか判らなかった。受話器を持ったままキョトンとしていると、

「あの女の子の事ですよッ!ほらッ!先輩が丸子町から連れてきてしまった、毎晩夢見るあの女の子ッ!」

彼は電話口で興奮しているように聞こえました。

 N君が僕に電話を呉れるなんて、恐らくこの一度きりでしたねぇ。つまりかなり異例なことなんですよ。その上、いつもは穏やかな彼が興奮している。

 「ああ、あの女の子の?」

彼が電話してきた意図を掴めずに、僕はぼんやりと答えました。

 するとN君、じれったそうに、

「そうです!あの女のこのことです!先輩、最近まだ、あの女の子が夢の中に現れてきます?」

と尋ねてきました。

 「そういえば、夢を見なくなったよ。多分、女の子は夢の中で一週間程、僕が遊んであげた為に、満足して帰って行ったんだろう」

と、彼に正直に告げますとね、N君は納得するどころか、更に慌てていました。

「先輩ッ!あの女の子、帰ってなんかいないんですッ!大変なんですよォ!」

何時にない彼の慌てぶりに僕の方が驚いた。そこで、ゆっくり話を聞くんで、今からN君のところに向かう、と告げて、僕は自分の車に乗り込みました。

 N君の家の前で、彼は待っていました。僕の車の助手席に乗り込むや否や、こんな話を彼はしてくれたのです。

 数日前、件の夢に出てくる女の子の話をN君に告げたその日、今度は彼の夢の中にその女の子が現れましてね。N君自身、僕の話を聞いていたためか恐くなかったそうです。

 夢の中で、僕と同じように、その女の子と手毬遊びに付き合ってあげましてね。彼女は喜んでいたらしい。

 (ああ、この子だな。先輩が言っていたのは)

夢の中で彼もそう想ったようです。

 ところがN君の見た夢は、その一度きりだったそうです。僕のように連続して見ることはなかったんですね。

 そこで彼も、僕と同じように、満足して帰っていったんだな、と想ったんですね。

 彼が丸子町の女の子の夢を見た夜が明けたその日のことです。N君は当時付き合っていた彼女とデートをしましてね。彼女の買い物に付き合いながら、繁華街をぶらぶらして過ごしました。

 そしてそのデートから三日経った頃、再びその彼女とデート。付き合い始めらしいので、当時はしょっちゅう遭っていたんですね。

 N君とその彼女が、二人でランチを取っていたときのこと。彼女が急に、楽しそうにこんな話を始めたんだそうです。

「ここ三日ばかりのことなんだけどさ、毎日女の子の夢を見るの。その子はね、赤い着物を着て、鞠つきするのよ。真っ暗な中で寂しそうに鞠つきしているからさ、あたしも一緒になって遊んであげるんだ。別に恐くないんだけどね、ちょっと不思議よね」

(夢が移った!)

にこやかで楽しげに話す彼女と対照的に、N君はゾッとしましてね。血の気が引いてくるのが自分でもわかったそうです。

 というのも、N君は、割と恐がりな彼女に、僕が連れてきてしまったらしいその女の子の話を伝えていなかったんです。伝えていないはずの手毬の女の子の話を、目の前の自分の彼女が話している。しかも、彼女の話す夢の内容がそっくり同じ。

(何ということ!今度は自分の彼女に、あの女の子が夢となって取り憑いている!)

まったく同じ内容の夢を、僕からN君に伝わり、今度は自分の彼女が同じ夢を話している。僕が連日に手毬の女の子の夢を見なくなった翌日、今度はN君が女の子の夢を見た。そしてN君は一度きり、その女の子の夢を見たと想ったら、今度は自分の彼女が夢を見だしたんです。つまりこれは、人から人へ、夢となって、孤独な手毬少女が渡り歩いているように思えるんですね。

N君自身に女の子が憑いてしまったのでしたら、まだ良かった。自分の好きな彼女に取り憑いてしまったとしたら、少なくともN君自身が媒介となっていることに、彼は恐怖と責任を感じたわけなんですよ。そこで慌てて、僕に電話してきたわけなんですね。

 「で、どうします?」

N君は、まるで僕に責任を取れ、といわんばかりにそう言いましてね。答に窮しますよ。どうすれば良いか僕にもわからない。

 その少女が過去、実在したのかどうか。実在しないのであれば、この一連の話は、僕の想像から始まって、U君で肉付けされ、N君とその彼女に影響を与えたとしても、単なる作り話で済む。そう想ったんですね。

 そこで、とりあえず、あの丸子町の蛍祭り会場に行ってみて、確かめよう、というくだりになりました。

 1時間ほどかけて丸子町に辿り着きましてね。日の沈む前でしたので、あの日、僕が手のひらで感じたお墓は確認できると思いました。

 会場にある駐車場に車を停めて、焦る心を宥めつつ、あの夜、まったく視野が利かなかった場所へと急ぎました。

 「やっぱりあったんだ、墓石」

僕は思わず呟きましたね。僕の想像よりももっと大きくて立派なお墓がそこにはありました。

 怪訝な表情のまま僕を窺うN君を尻目に、墓碑銘を確かめてみました。するとそこには・・・。

 磯○カツ 享年七歳 明治七年没

と、あの手毬を持った少女を思い起こさせる墓碑銘が刻まれていました。

 「N君、この娘さんだ・・・。Uの言う通り、確かに七つで亡くなってる。しかも明治時代の初期に・・・」

見つけた途端、脱力感、というんですかね、不思議な疲れを感じましてね。

 結局、僕の脳裏に割り込んできたあの映像は、単なる想像力の産物でもなかった。本当にいたんです、あの少女。僕から夢で伝いながら、N君へ。そしてN君の彼女へ渡って行ったあの少女。

 傍らのN君もある種の感動を覚えているようでしてね。思わず墓前で手を合わせながら、

「先輩、不思議なことなんですけど、彼女、取り憑かれたとしても大丈夫な気がしてきました」

と、言うんです。

 僕も手を合わせながら、同じことを考えてました。幼くして亡くなったカツさんという女の子は、きっと寂しかったんだろう。寂しくて、夢の中で遊んでくれる人を探し続けていたんだろう。そして、僕のところからN君に、夢を渡って行った様に、飽きたら他の人のところへ渡っていくんだろう。だから、N君の彼女さんが一時的に取り憑いてしまったとしても、いずれは彼女にも飽きて、誰かの夢に現れるんだろう。素直に僕はそう思いました。

 この経験より数十年後、僕はとある怪談サイトにこの話をアップしました。すると、不思議なことに、そのサイトのレスには、私もその女の子の夢を見た、という記述がいくつか付けられていました。

 未だにあの女の子、いろんな人の夢の中を渡り歩いているんでしょうねぇ。そして、この記事がうまくアップされるのなら、きっと意味があるんだと思います。つまり、この話を見た方の、特に子供好きな方、或いは同じ年齢の子供さんを子に持つ親御さんのところへと、そろそろカツさんは渡って行きたいんじゃないかなぁ。そう思うんです。

 
 
 

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