

夜の咽び
歴史の古い街に住んでいますとね、様々な奇妙な話を聞くことが出来ます。 僕の住む街はお寺さんが多くて。小さな頃は一風景でしかなかったお寺さんですが、由縁をお聞きしますとね、そこには色々な物語が隠されているんですね。 中学時代の友人、榊君とこの間、遭いましてね。彼の話が面白かっ...


奇縁奇瑞
これはまさに奇縁でしょう。そして、私はとある方達の成仏に携われたのかもしれません。 私は鎌倉散策が好きでしてね。それこそ毎週出かけた時期もありました。 女房を連れて、北鎌倉の古刹を訪ねましてね。何度も訪れているところですので、そのお寺で行っていない所を巡ってみようということ...


心残り
私が学生時代、一年ほど住んでいたのは、因縁深い地域でしてね。水汲、と書いて、みずくま、と読みまして。 では、何の水を汲むのか? これは引越した後、しばらくして聞いたことなんですがね。実は江戸時代から明治に至るまで、水汲地区は処刑場だったそうでして。処刑者の血を洗う水を汲んだ...


探しモノ
陰惨な歴史、特に戦争時代の悲しい話ほど、伝わり難いのではないか、 とよく思います。決して忘れることのできない、心に刻み付けられた光景なんでしょうけれど、思い出すたびに心が疼く。戦争体験が伝わらない訳は、伝える側のそんな心の痛みがあるからかもしれません。...


二人乗り・・・
川に架かる橋、って、門と同じく、異界への入り口だ、という話、聞いたことありません?丑の刻参りの原点は橋姫ですし、昔話の”大工と鬼六”で、橋を架けるのは鬼ですし。神道では、川も重要で、川に流した穢れはいずれ海の底に流れ着くといいます。そうすると、川は異界の始まりで、そこに...


親父殿の話
僕の親父は頭が良くて、とある大企業の研究部長でした。化学屋でしてね、科学の信望者でしたね。凡そ再現性のないものは、この世に存在しない、という持論、信じていましたね。ですから、幽霊話なんて信じない、って、口癖のように言ってましたよ。...


「ほら、そこが・・・」
「偶然だよ、偶然」 なんて、よく耳にしますがね。私にしてみると、その偶然という言葉、事実を誤魔化すのに都合のいい言葉だなぁ、と思うことがままありまして。時にはこんな”偶然”もありましてね。 私が通っていた高校は、通学時分、建て直しになりましてね。二年生の途中から、校舎のあち...


濃霧
私の出身大学は山国にありましてね。四方にドライブに良い名所がありました。 私も当時、生意気にもアルバイトで貯めたお金で型落ち中古のVWゴルフを買いまして。乗り回していましたね。観光地ですから、60分圏内でも、様々風光明媚な箇所が多かった。...